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  • 2017.06.13 Tuesday
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5月19日(金)   初ダイブ              晴れ


今日はしんかい6500の初ダイブの日。研究者のトップバッターとして、まずベテランの三輪さんが乗船する。朝、順調に潜航の準備が進んだが、10:00いざしんかい6500を吊り下げて海に降ろそうとすると、肝心のAフレーム(船の再後部にある大型クレーン)が動かない。あれこれチェックしてみたが不具合の原因は基盤でも油圧でもないらしい。一時は、本日の潜航はもうとりやめかとの話も出たが、最初からリセットしてみるとなんなく回復した。種々の安全確認の後、潜航準備再開となった。
 


潜航開始は正午過ぎ、浮上予定は17:00。潜水艇が海面に着くのを見計らって、後部デッキから海の神様に御神酒を上げる。御神酒の日本酒はあの有名な松竹梅だ。潜航の安全と研究成果を祈念した。
 


今回の潜航番号は#1492。しんかい6500ができて、これまで1492回も潜ったということだ。大変な回数だと思う。後部甲板から潜航の様子を見守る。炎天下の後部デッキから三輪さんを盛大に見送って大汗をかいた。シャワーを浴びて、冷たいコカコーラ。溜まった衣類の洗濯。いまごろ三輪さんは親ウナギに出会っているころだろうか。ダイブの様子は三輪さんの方から詳しい報告があることだろう。
 


時間が押して、YKDT(よこすかのディープ・トウ;深海カメラの意)投入は結局21:00近くになってしまった。私は前夜半のワッチ担当で23:30までYKDT観測だ。生物が出現すると時刻、場所、イベントなどのログをつける。デジタルカメラのリモートスイッチを握って、スクリーンを見つめる。目立った生物が出現したときは瞬時にスイッチを押し、カメラ撮影を行う。船の揺動によるYKDTのしゃくりや船の前進運動のために、視界に入った生物はあっという間に姿を消す。これを視認したり、カメラのスナップショットで捉えたりするのはなかなか難しい。
 


YKDT観測を行う部屋は船の最上階、後部制御室の裏手にある。空調が効きすぎてやたら寒い。一旦居室に帰って、防寒用の衣類をまとって再参戦。6KチームのYKDT担当者・鈴木さんにカメラの位置変更をお願いした。これまで、YKDTは地学関係の仕事で海底を観察することが多かった。だから多くのカメラは下向き、海底を見ている。しかし、前から近づいてくる親ウナギをなるべく遠くから発見するためには、カメラを前向きにしておかなくてはならない。鈴木さんはにこやかに「明日カメラの向きを変更します」といってくれた。観測スタッフの協力態勢がすばらしい。感謝感謝。
 


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■今日の当直                       三輪 哲也
  Today’s correspondent                                                          Tetsuya Miwa
 
 編集長から「ウナギ博士の航海日誌」に記事を書いてネ、と頼まれました三輪です。海洋研究開発機構で生物や環境を知るための機器開発を行っていて、「ウナカム」というウナギ専用撮影カメラシステムを担当しています。今日から、いよいよ水中カメラを投入して、「ウナギ」の泳ぐ姿を直接撮影する日が来ました。さあ、これから「しんかい6500」を海にいれるぞという段階で、動きが止まってしまいました。
調査船「よこすか」の船尾についている「Aフレーム」という大型のクレーンが、動かなくなったのです。「しんかい6500」は27トンもある大きな機体。「Aフレーム」が動かないと、海の中に入れることができないのです。1時間待ち、2時間待ち、船員がバタバタと動き回る中、研究班は何もできずに待つしかないのです。お昼に近づくにつれ、絶望感というか、どうしようか、重い空気が漂ってきました。とうとう、決断する段階になり、「しんかい6500」司令が本日潜航中止の決断をしました。研究班は、次なる腹案を考えるために集まり、塚本先生が「残念だけど、船元にはウナギが待っている。代案で行こう」となったとき、船内の様子も見るためのTV画面にふと目をやると、「あれ?Aフレームが動いている?」。中止決断をしたわずか5分後のことでした。


 


調査船の危機対策は本当にすごいと感じるんです。自分の体ならば、「仕事休むか。病院に行こう。」となるのですが、調査船ではそれが出来ない。ここはマリアナのど真ん中。「Aフレーム」は、動いて当たり前の装置。私も昨年末に、突然に五十肩となり、関節が動かない不便さをしいられてきています。「動かないもの」を動かすようにするには、相当大変なのです。「Aフレーム」は、リミッターという装置の自動停止センサが不良だったようですが、そんなところ、普段は壊れないところ。探し出し、修復する。調査船で働く船員さんの、船を修復する能力、高すぎます。
さて、中止決断はすぐに撤回。「動くなら、行こう!」という研究班の素早い判断があり、「中止とちゃうの?」「え!やるの。時間がないけんどいいの?」と錯綜中に、本日の潜航パイロットが、「お弁当、食べちゃってください。もしもよかったら、食堂のお昼でも。本日は、ざるそばですよ!」とのお誘いも。「いやいや、行きましょう。」と、かたい決断の塚本先生。それでも、潜航中止情報で、それぞれに仕事オフモードに入りかけたみなさんを、活気づけ、いざ潜航調査へと向かうのでした。
ちょうど正午の潜航。マリアナの太陽は真上にあります。「しんかい6500」のハッチは狭いのですが、なんと、直接太陽光が耐圧コクピットの中に入ってきました。潜航服という保温に優れ、耐火性能の高い服を着ているため、とにかく船内がまぶしい。そして蒸し暑い。機器の作動チェックをしている最中、あまりにもまぶしくて、チェックリストが読めない。タブレッドの情報も、「ぬぬ、読めない。」。体が十分にほてってしまって、ハッチを閉めても、船内の温度はぐんぐん上昇。気温34℃湿度84%。あつい。あつい。あせが・・・。サウナ状態です。船内が暑いと、タブレットPCも冷えない。熱い。持つ手がどんどん熱くなります。悪循環。深海に潜ると寒いけれど、潜るまでは、まさに蒸し風呂です。いい汗かきました。


 


どんな海底映像が見えたかは、このブログにはかけませんが、「ウナギの仲間」は撮影することができました。海の中では海水も採ってきました。いよいよ明日からは、環境DNA分析も開始です。私はひたすら水中撮影映像の確認です。んっ?そういえば、私たち研究班は、何かに似ているな? ふと、思います。「行方不明の鰻ナギを探せ。」特捜24時間、でしょうか。特捜本部長の塚本、渡邊デカ長が作戦の指揮をとる。IT班樋口デカが、シミュレーションを立てて行動予測を立て、映像班の私たちが、監視カメラから、人物特定のカギとなる証拠映像を集める。海外に詳しいマイク捜査官が、厳しい目で判定をする。「うん、すごいネ!」。靴底を減らして、奈須・押谷デカが、物証を集めてくる。明日からは科捜研の女、竹内女史がDNA鑑定を…。そこに、新人デカ、芹沢がトンでもないヘマを…。うん、サスペンスドラマを見すぎです。
マリアナ海域は、海もきれいですが、空も美しい。最後にきれいな夕焼けをお伝えします。




 
(了)
 
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■Mike’s Corner                                               Michael J. Miller
 
The first dive of the Shinkai 6500 was made today with Dr. Miwa from JAMSTEC as the scientist onboard.  He has collaborated with Prof. Tsukamoto on several cruises looking for spawning eels using the Hyper-Dolphin and Una-Cam drifting camera systems on the R/V Natsushima.  The photo shows the submersible being deployed behind the ship, with the small boat bringing divers who will remove the connections to the ship on the top of the submersible.  The dive initially went down to a depth of 1000 m and then it came up to a particular temperature range of 4.7-5.3C at depths between 800-900 m.  Those temperatures and depths are based on the daytime behaviors recorded by satellite transmitting pop-up tags attached to Japanese eels.  The tagged eels show very clear diel vertical migration behavior (DVM) of coming up shallower at night and then going back down deeper during the day.  So we are using those depths to target our observations.  The dive went smoothly, and fortunately two mesopelagic eels were seen that were using a vertical body position of holding their bodies perfectly straight and not moving.  We published a paper about an eel we recorded doing that in 2012 during a deep dive of the Shinkai 6500 during that earlier cruise, so we were hoping to see some more vertical eels this time so we could publish another paper with other information in it also.  So the observations today and hopefully more in the next 4 dives will enable us to make a new paper.  Various other deep sea animals were seen, but no anguillid eels.  The submersible also took water samples in the Niskin Bottles that were added to the outside, so that water was transferred to other containers for filtering for e-DNA or amino acid analysis.  Then after dinner the Deep-Tow Camera System (YK-DT) was deployed to make video observations in the upper few hundred meters and to take water samples.  Lots of interesting planktonic organisms were seen in the YK-DT video imagery until it came back onboard at 2 am, with another load of water samples.




 
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今日の海、今日の空                                                                    樋口 貴俊  
  Today’s sea, today’s sky                                                 Takatoshi Higuchi

 


 
■We Are Here




 
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(本ブログに使われた全ての写真のクレジットは、日本大学とJAMSTECが有します)
 
 
 
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■検索ワード
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